「中正」とは「蒋介石」の本名である【蒋中正】を指し、1975年4月5日に亡くなった中華民国初代総統の蒋介石を追悼するために建てられました。中正紀念堂は蒋介石に対する哀悼を示すのみならず、中華民国の思想を表現する場でもあります。そのため、敷地内のそれぞれの建物に中華思想を示すアイテムが散見されます。
中正紀念堂のシンボルともいえるのが本殿の奥に設置されている中華民国の初代総統・蒋介石のブロンズ像。この像はついぞ帰ることの叶わなかった故郷・中国を向いて座っているのだそうです。銅像の土台には蒋介石の遺言が、上部には「倫理、民主、科学」という蒋介石の基本政治理念がそれぞれ記されてあります。
そんなブロンズ像が設置されている本堂の屋根は八角形で、儒教で推奨される8つの徳「忠、孝、仁、愛、信、義、和、平」に由来し、「天人合一」という中華思想を表わしています。本堂への階段は蒋介石像前の階段の数を足すと89段となり、これは蒋介石の享年に基づいて作られているためです。
中正紀念堂の見どころの1つが「衛兵交代式」。9時から17時まで1時間おきに行われます。護衛担当は「海軍・陸軍・空軍」の順で半年ごとに入れ替わる規則となっており、制服の色で担当している軍を見分けることができます。(海軍のみ夏は白・冬は紺、陸軍は深緑、空軍は青)
時間がある方は本堂1階にある「蒋公文物展視室」に足を運んでみてはいかがでしょう。蒋介石の生涯や時代背景、そして決して切り離して語ることはできない日本との関係などを知ることができます。険しく凄惨な戦争の歴史を辿る一方で、愛妻家として知られる蒋介石の妻に対する思い等、台湾の歴史には欠かせない「蒋介石」という人物を様々な視点で見ることができます。